保険者は柔整師・鍼灸師をどう見ているのか
療養費の支給申請が適正に行われているかを取り締まる保険者。彼らは柔整師や鍼灸師をどう見ているのでしょうか。保険者に意識調査を行った結果と、施術者が遵守すべき義務についてお話します。
鍼灸院・接骨院の価値
多くの接骨院・鍼灸院で働く柔道整復師・鍼灸師のみなさんは、ご自身が“地域医療の一端を担っている”と感じていることと思います。接骨院・鍼灸院とは、患者さまの身近にあって、病院に行くまでもないちょっとしたケガや不調を処置するには最適の場所だと感じます。そしてそんな先生方の元へ通院している患者さまたちも、きっとその実感をお持ちだからこそ継続して来院されているのではないでしょうか。
次の図は、2013年3月、地域包括ケア研究会報告書より抜粋された「地域包括ケアシステムの姿」です(画像出典:厚生労働省HP・包括的システム)。この図を見てお気づきの方も多いと思いますが、どこにも鍼灸院・接骨院、柔道整復師や鍼灸師の名前がありません。公式資料において医療の枠組みの中に鍼灸院・接骨院を明示できる状態ではない、という考えを国として明示していると言えます。しかし検討委員会においては、「柔道整復師は地域医療を支える重要な役割がある」と発言があり、今後の活躍を大いに期待されているとも取れます。
過去の推移から見る国の指針
期待されていながらも公式に発表されないという背景の中、それでは接骨院・鍼灸院はいったい何を求められているのでしょうか。一番感じ取りやすい柔道整復の療養費の推移を辿ってみましょう。
2006年度まで請求が可能だった4部位目は、2010年以降は0%となり、2013年には3部位目が60%に低減となりました。接骨院で見ることのできる状態であり、且つ3部位以上に処置が必要な場合は限りなく少ないはずであるということが示されています。2014年の改定では、消費税対応を含めて初検料と再検料の上乗せ改定となりました。そして2016年10月に行われた療養費支給基準の改定は、骨折・不全骨折・脱臼に係る整復料・後療料等がかなり引き上げされています。接骨院とは、こうした応急施術を行うべきであり、適切に運用されていれば相応額の保険料を確保するという見解を示した改定でした。不正を防止するためということももちろんあるでしょうが、行政の思う「適正」な数値に向けて着実に進んでいるのでしょう。
実際にそうした応急施術・外傷対応を中心運営とした接骨院も存在します。ほねつぎアカデミーセミナー講師としてもお馴染みの、武田哲也氏です。武田氏の院のスタッフと、これからの接骨院・鍼灸院の在り方について話をした際、不正請求の話題になりました。「部位転がし」というワードが行政から出るようになった、とお話したところ、「部位転がしとは何ですか?」と聞き返されました。不正取締りの強化や横行についてはご存知でしたが、そういったワード自体はご存知でない様子でした。何故なら、彼らにとって「部位転がし」は、全く無縁なワードだったからです。
武田氏の院では、骨折や脱臼、捻挫という症状に対しての整復固定を中心に行っています。それ以外はすべて自費施術です。こうした運営方法の院は「患者さまからの大きな信頼」を生みます。保険と自費のはっきりとした境界線があること、西洋医学の視点で病院や整形外科の医師と連携が取れること、そして明確な“治療指針”を掲げていることで、「施術者」としての位置感を若いスタッフの方でさえも持っています。そのため、患者さまの次回の来院日は施術者主導で決められ、患者さまもそのことをすんなりと受け入れてくれる状態が自然と生まれています。「ケガをしたら武田先生の院へ」という認識が患者さまの中で自然と生まれ、自費施術の提案も受け入れてくれやすい環境が、グループ院全体で自然と育まれているようです。
この形こそが、本来の接骨院・鍼灸院の姿だと武田氏は語ります。「骨折や脱臼では接骨院には来てくれないし、それ以外でなんとか売上を立てるしかない」と思い込んでいた方も多いのではないでしょうか。それに対し武田氏は「(接骨院側が)断るから来ないだけ」だと断言されています。もしご自身の院が、骨折・脱臼・捻挫といった整復固定を行っていたとしたら…、今回の改定はかなりプラスになったと思われます。
苦し紛れの保険請求をするのではなく、法律を遵守した上で、人間力だけではなく「医療の一端を担う施設」として地域から信頼を得なければなりません。そうすることで、ようやく公式に認めてもらえる存在となるのではないでしょうか。
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