【第2回人事・労務ルール作り】誤解が生じやすい 有給・勤務時間ルール
第2回のテーマは『誤解が生じやすい有給・勤務時間ルール』です。「そんなこと言わなくてもわかるだろう…」ということや、院長ご自身が知らなかった世の中の勤務ルールを従業員から突然投げかけられた経験はございませんか?
誤解が生じやすい有給・勤務時間ルール
新連載『成長する接骨院(整骨院)・鍼灸院のための人事・労務ルール作り』は、社会保険労務士で株式会社はた楽の代表取締役の佐藤東様に、人事・労務作りを整えていくポイントを全6回に分けて解説いただきます。
第2回のテーマは『誤解が生じやすい有給・勤務時間ルール』です。「そんなこと言わなくてもわかるだろう…」ということや、院長ご自身が知らなかった世の中の勤務ルールを従業員から突然投げかけられた経験はございませんか?
第2回 誤解が生じやすい有給・勤務時間ルール
勤務時間や休日・休暇の取り扱いは、労働者、使用者、双方にとって、金銭や個人の価値観や生活が絡みあう、切実でもありややこしいテーマです。
院としてルールを明確に示すことが必要である一方、世の中の常識や法令により、動かしがたいルールもあります。院長に全くその気がなくても、「うちの院はブラックだ…」と言われないように、きっちりとした法令の理解と院のルール作りが必要です。
【事例】こんなときどうする!?有給休暇(有給)を要求するスタッフ
入社して6か月になる受付スタッフの近藤さん(仮名)が、「院長、来月旅行に行くので〝有給?をとらせてください」と言ってきた。
山田院長(仮名)は、「うちは有給の制度は設けてないから駄目だよ」と返したが、近藤さんも「前に勤めていた会社ではもらってましたよ!」と譲る気配がない。
そもそも、まだまだ少人数で運営している院のため、とても有給など与えている余裕はなく、認めることは釈然としない。
必須対策・+αワンポイント
【必須対策】計画的に有休を消化する仕組み
事例の山田院長と同じように、釈然としない、腑に落ちないと感じられた方も多いと思いますが、有給付与は会社で独自に定めるルールではなく、法律で定められた労働者の権利ですので、院側が拒否することはそもそもできません。事例の近藤さんの場合、6か月勤務/出勤率8割以上で、10日間の有給の権利が発生しています。
一方で、有給を取得する時期の決め方や申請方法については、就業規則の中で各社のルールを定めることができます。一例としまして、「計画的に年休の時期を特定し、院の運営に差し障りない形で有休を消化する計画年休についてご紹介します。就業規則サンプル から引用しました、年次有給休暇に関する規定例を見てみましょう。
就業規則サンプルより引用
第21条(年次有給休暇
会社は、労働者を代表する者等との書面による協定により、年次有給休暇のうち5日を超える日数について、あらかじめ時季を指定して与えることができます。その場合、次の日が対象となります。
(ア)祝日(国民の休日)
(イ)年末年始休暇
(ウ)その他会社が指定する日
このように規定することで、祝日や年末年始休暇など、すでにある休日・休暇を「有給休暇」に含めることで、院にとっても支障がない形で有休の消化を進めます。ある院では、勤続2年以上のスタッフを対象とした「リフレッシュ休暇」の制度を設け、これも「計画年休」の中に組み込んでいるという例もございます。
【+αワンポイント】週所定労働時間「44時間」は可能!?
法定労働時間は「週40 時間」と広く知られていますが、接骨院(整骨院)・鍼灸院においては「週44時間」とする特例が存在することは、あまり知られていません。この特例は法律上、「常時10名未満の保健衛生業」に認められており、通常の接骨院の人員体制からすると、大部分の院が対象になると考えられます。わずか4時間の差とはいえ、所定労働時間は「時間外労働」のカウントの基準になるものであり、「時間外労働手当」の金額にも大きく影響を及ぼします。すでに週40時間で運用が定着している院にとっては難しいですが、これから新たに「就業規則」を定める院におきましては、ぜひ導入をご検討ください。
第2回『誤解が生じやすい有給・勤務時間ルール』はいかがだったでしょうか。安定成長を目指す鍼灸接骨院にとって不可欠な人事・労務ルールは、会社のルールブックである『就業規則』とその関連書式により整えます。本連載では、引き続きそのポイントを解説していきます。
※1 計画年休とは
5日間の自由年休を除き、労働者個人の時季指定権や使用者の時季変更権は原則として排除する。
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筆者:株式会社はた楽 代表取締役 佐藤 東
著書に「成果主義人事・賃金システム」(中央経済社)、「やる気を起こさせる!目標設定と面談の技術」(アイ・イーシ^)。最近の寄稿に「育成できる評価者&自律する被評価者の作り方」「社内起業家人材の育成法」(ともに月刊人事マネジメント)などがある。
「会社と社員の成長に不可欠な評価制度の作り方【佐藤東】」「デフレ時代に対応する報酬制度の作り方【佐藤東】」などで制度導入のノウハウをDVD解説も行っている。
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