【第3回人事・労務ルール作り】接骨院で多発する「未払い残業」
昨今、ニュースでもよく取り上げられている「未払い残業」ですが、接骨院でも多発しているようです。後々大きな問題とならないよう、事前の対策が必要です。
未払い残業を発生させない給与支給ルール
労働者が未払いの残業代を請求する場合は、過去2年分に遡って請求できることが法律上認められています。労働時間が比較的長くない接骨院であっても、2年間(24か月間)の累計となると1人当たり約100万円の残業代となることも珍しくありません。「もしもこの金額を払っていないとみなされれば…」「しかも1人でなく、5人のスタッフが一斉に言ってきたら…」と考えると、差し迫ったリスクとなってきます。
【事例:スタッフが残業代を請求してきた】
勤務柔道整復師の小山君が、「3月の残業時間は30時間でしたが、残業代が支給されていません」と言ってきた。
それに対して院長は、「うちはずっと残業代込みで支払っているから…」と苦しい言い訳を返したが、果たしてそれでいいのだろうか。
ここで確認しておきたいのは、小山君の労働状況です。
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・
月次給与
200,000円
月間労働時間
221時間
平均所定月間労働時間
365日/7日×44時間÷12か月=191時間
時間外労働時間
221時間-191時間=30時間
未払い時間外労働手当額
時間外労働手当額
200,000円/191時間×1.25×30時間=39,267円
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・
みなし残業代込みの基本給設定
小山君の事例では、「基本給をベースに残業代を計算し、そのまま基本給にプラス」されますので、残業代を含めた月次の支給額は高くなります。基本的な対策としては、「基本給の一部に残業代を含める」という給与方式をとることです。いわゆる「みなし残業制度」※の導入です。
(例)
基本給20万円(時間外労働30時間分を含む)
〇実際の1か月の時間外労働が30時間以内の場合
基本給20万円を支給
↓↓↓
支給額 20万円
〇実際の1か月の時間外労働が40時間で、30時間を10時間越える場合
超えた分の時間外手当を支給
↓↓↓
支給額 20万円+10時間分
これらのルールは、個々の雇用契約書や就業規則(賃金規程)に明記しておく必要があります。
ただし、ここで1点注意事項があります。際限なく、みなし残業代を基本給に組み込めるわけではありません。みなし残業代を除いた基本給が、いわゆる最低賃金時給を下回らないように設定する必要があります。
※みなし残業制度とは
あらかじめ月給に固定で一定時間分の残業代を含めておき、その時間内であれば残業時間を計算せずに固定分の残業代を支払うという制度。
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