◆法人か個人事業、賃貸か所有で処理は変わる?
事業を行っているのが法人か個人か、また自宅が所有物か賃貸かで状況が変わってきます。
ではまず法人の場合を見ていきましょう。
①個人で事業を行っている場合
(1)個人で自宅を所有
個人で自宅を所有している場合、原価償却費の一部を使用割合に応じて経費に算入できます。この場合注意したいのが、住宅ローン控除がある場合です。住宅ローン控除は、自宅として使用している割合分しか控除できなくなります。通常は事業使用割合分の減価償却費を計上するよりも、全額住宅ローン控除を計上したほうが節税効果があるケースが多いです。
(2)個人で自宅を所有
個人で自宅を賃貸している場合、家賃の一部を使用割合に応じて経費に算入できます。
②法人で事業を行っている場合
(1)個人で自宅を所有
まず個人で自宅を所有している場合、法人と個人で賃貸契約を結ぶことになります。賃料は相場と同水準で設定する必要があります。自宅全体の賃料を近隣の同種の物件から推定し、実際に使用しているスペースの割合に応じた賃料を計算します。
法人が個人に支払った家賃が、個人で不動産収入となるため、個人所得税を確定申告する必要があります。主な経費は自他kの減価償却費となるでしょうから、法人で使用しているスペースに応じた額を適切に計算しましょう。また固定資産税も忘れずに法人で使用しているスペースに応じた額を経費に算入しましょう。
(2)個人で自宅を賃貸
自宅が賃貸の場合、法人の事務所スペースにかかる家賃は、個人で立替払いしているという処理になります。よってその額を、法人から個人に支払うことにより、法人の費用となります。その金額は、個人で支払っている家賃に、法人が実際に使用しているスペースの割合を乗じて算定します。
(3)法人で自宅を賃貸もしくは所有
そして最後に法人が賃貸したり所有してる場合、社宅ということで自宅の減価償却費全額が一旦法人の費用になります。ただし全額を法人費用にしてしまうと、プライベートの部分まで会社が費用として負担していることになり、その分が給与として認定されてしまいます。そのためプライベートの部分を個人の負担としておく必要があります。
個人の負担とすべき「賃貸料相当額」は、次の(1)~(3)の合計になります。(所得税基本通達36・41)
(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
(2)12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル)
(3)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
※小規模な住宅(建物の耐用年数が30年以下の場合には床面積が132平方メートル以下である住宅、建物の耐用年数が30年を超える場合には床面積が99平方メートル以下である住宅)の場合。
◆どれが一番お得なのか?
状況や金額に応じても変わるので一概には言えませんが、法人で所有ないし賃貸するのが、一番経費にできる割合が多くなるケースが多いです。
なぜかというと、法人で所有したり賃貸された場合は、まず全額が法人の費用として考えられます。その上でそのうち一部は入居者が負担すべき(もしくは一部が入居者の給与)であるということで、個人負担分を受け取ると考えられるからです。
◆注意すべき点は?
税務においては、契約書などの形式よりも、実態の使用状況などが優先されます。いくら契約書を形式的に整えていても、実際に自宅を事務所として使用していなければ、税務調査の際に否認事項として指摘される可能性がありますのでご注意ください。
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執筆者
山本公認会計士・税理士事務所
山本 邦人(やまもと・くにと)税理士
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